第一章 トップ会談と候補者擁立
そんな中である与党所属の参議院全国比例当選者との面接がセッティングされた。元自衛官と聞きつけて、血が騒いだのか山脇が、「私にも幾つかの質問をさせて貰えないか?」と言ってきた。
そこで最初に山脇に質問して貰う事で面接試験に臨むと、その議員は山脇を見るとすっくと直立不動で、「お久しぶりです、お元気そうで何よりです」と言って自衛官らしい敬礼をした。
「君は私の教え子か?」と山脇が訊ねると、
「はい、防衛大出身なので先生の講義を何度か受講致しました。卒業後は航空自衛隊でスクランブル要員も務めました」と議員が答える。
山脇が続けて「君は元自衛官として憲法九条を改正する必要はあると思うか? 答えてみてくれないかな」と質問すると、
「『自衛のための戦力は戦力にあらず』という詭弁は昨今の緊張感の高まった国際情勢の中ではもはや通用する余地はなく、一刻も早く憲法九条二項の『陸・海・空その他戦力は保持せず』という詐欺紛いの条文を改正する必要があると考えます」と答えた。
「おお、頼もしい答えが返ってきた。では自衛隊を国軍とする事に賛成か否か?」と山脇が質すと、
「自衛隊という実力部隊は世界にはありません、その為武力を有する事でテロ組織との区別が難しい面があります。即ち国際派遣の頻度が増している昨今では、防衛軍ないしは国防軍に昇格させ、国際標準化すべきです」と答えた。
「うん、その通りだ!」と山脇が頷きながら賛同した。
「我が国にもスパイ防止法は必要と思うか?」と山脇が質すと、
「同盟国との軍事インテリジェンスを共有する為には、相互間の信頼の為、スパイ防止法は不可欠と考えます」と即答した。
これを聞いた山脇は、「もう言うことはない。パーフェクトだ、私の質問は以上だ」と言って質問を終えた。
引き続いて面接試験の質問を武藤が議員に行うと、
「私は参議院全国比例という形の選挙で戦ってきました。同じ比例となっていますがこれが似て非なるもので、衆議院議員選挙拘束式比例は、党が当選可能な名簿登載順位を決めます。その為衆議院では小選挙区と重複立候補する人の名簿順位は殆どが一位か二位なので惜敗率で当選者を決めるのです。
それに対して参議院の比例は非拘束式比例と言われ、政党名か個人名を記載して貰うという選挙なので、政党名を多く獲得したことでその政党に仮に二〇人の当選枠が与えられたとすると、その政党に所属する個人名で多くの票を獲得した人から順に二〇人が当選ということになります。そんな経験があるので私も比例代表制という選挙には大いに疑問を感じました。
重複立候補は落選を免れる保険の様なもので有権者心理からは乖離したものとしか思えません。廃止して中選挙区制に移行する事には賛成です」と答えてくれた。
こうしてすっかり意気投合するのだが中々決定打とまではいかず北海道ブロックはペンディング状態となった。