引っ越しの日も決まり、新しい生活に必要な家具などを揃え荷造りも始まりました。私には本の整理が大変でした。

アパートで暮らすことになってからずっと段ボールに入れてあった本を、すべて持っていくことはできません。移住先の平屋では、それほどのスペースを確保できませんでした。処分しなければなりません。ほとんど小説ですがそれぞれに思い出があり、整理は思うようにはかどりません。

そこで私は、この著者の本とは離れられないなという気持ちを区別の基準にすることにしました。人生を共にし、いろいろな影響を受けた作家の本を優先しました。

私が高校生の頃からずっと一緒に生きてきたと勝手に思い込んでいる五木寛之さんの本は200冊以上ありました。星野道夫さんの写真集やエッセイは、すべて私の大切な思い出です。どれも手放すことなんてできません。

その他にも作業を進めていると、どうしても手放せない本が出てきてしまいます。文庫本でも読み終えるのに苦労した『罪と罰』『戦争と平和』『資本論』だけは残しました。

逢坂剛さんのイベリアシリーズ、春江一也さんのプラハ・ベルリン・ウィーン、関野吉晴さんの『我々は何処に行くのか』、倉本聰さんの『北の国から』全巻、山崎豊子さんの『沈まぬ太陽』に、鎌田實さんのエッセイ、そして創刊号からずっと買っていたバスケットボールの雑誌『ダンクシュート』やサッカーの雑誌、ビートルズやブルース・スプリングスティーン、エリック・クラプトンの伝記など。

これから先、例えページを繰ることがなくても手放すことはできませんでした。何日もかけてようやく整理し終わった時には、段ボール20箱以上になっていました。

妻を説得して、何とか引っ越し荷物に入れさせてもらいました。その他レコード盤やCD、DVD、VHSも選択に悩みましたが、ほとんど引っ越し荷物に忍ばせました。

それに比べて妻は、服や靴、着物までほとんど処分してしまいました。

「もう着られなくなったから、いらない」

妻の秘めた覚悟でもあるかのような潔さが忘れられません。

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次回更新は9月4日(水)、21時の予定です。

  

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