そして、どのように人生を生きたら良いのかという人生論的アプローチから抽象的に考えた場合、私たちの人生という時間を掛けて大好きなことをし、夢を叶え幸せな人生を過ごすと同時に社会に貢献し未来の人たちに何を残すのかという人生の目的は大きく、㋐(最高善とされる)幸せになること、㋑(自己の枠を超えて)世のため人のために生きることつまり人のために役立つこと(社会貢献 )及び㋒人間性や魂を向上 させることなどに分けられます。

ここではこれらのものを総合して、図表 1―10 のような人生の目的を考えています。

(出所:岩崎勇・四海雅子共著『哲学 輝く未来を拓くために』(幻冬舎 2022)36頁 一部修正)

ここで長期的で一段高い視点から見た人生の目的は、①自己の個性を生かしながら進化向上し、自己の夢を叶え幸せになること(自己実現:self realization:自利)と同時に、②その生き方として(価値のあるものを創造して)世のため人のために尽くすこと(社会貢献:利他)という自己完成3(自利利他)を目指すことです。

前者は自己の幸せのために、そして後者は自己が社会へどの位貢献しているのかを示し、両者で自利利他の関係が成り立っています。これと同様な考え方として企業で言えば、例えば、マイケル・ポーターのCSV(シーエスブイ)(creating shared value:共有価値の創造)において、企業利益の追求と社会課題の解決という社会貢献の両立が説かれています。

サキ:つまり、自利利他を目指すのですね。

コウキ:そのとおりです。そして、従来においては利己的に「自己の利益を追求すること」(自利)によって幸せになれると一般的に考えられてきたが、今日の心理学ではより高い品格と視点から利他的に「他者に貢献すること(利他)の方がより自己も幸せになれる」ことが示されています。