11.EGAMI 小説記憶人

「皆無事だよ。ラムカが唄を歌ってくれたお陰さ……」

「私が唄を……?」

「覚えてないのかい? 凄かったよ。聞きなれない言葉だったけど、あれでカー達は去って行ったから皆逃げ出せたんだぜ」

ラムカは、何も覚えていないようだったが、トラゴスは続けた。

「今は、シーバスがいる水の国へ向かっているんだ。シーバスの持っているコンパスでしか、記憶の森へ行けないらしく、どうも、大幻透視師が言うには、俺達が記憶の森へ行くのが定めなんだと……」

トラゴスはミヤンに言われた事をラムカに話した。シーバスは大海賊と呼ばれていて恐れられていた。そんなシーバスを助ける事が自分達に出来るのかトラゴスは不安に感じていた。

「やっと起きたか」

そこへ話し声が聞こえたカイゼルが顔を出す。カイゼルは、何故自分達が記憶の森を目指しているのかをラムカに話した。

「今なら話せるか……。実は、俺達が太陽の国で零族として奴隷のような日々を過ごしていた時だった。

太陽の国は、記憶を入れられた者達が0の刻印を額に押され奴隷として働いているのは前、話して知っていると思うが、元々は人間で、何かの罪で捕らわれた罪人は記憶を入れられ人間の頃の記憶をなくすようだった。

俺達も、人間だった頃の記憶はないが、俺達は人としての感情があり、言葉も話す事が出来た」

そこまでカイゼルが話すと、トラゴスが割って入る。

「だけど、同じ零族でも魂が抜け意識をなくしたゾンビのような者達も大勢いて、彼らは何処からか船で運ばれて来るんだけど、その数は日に日に増えていたんだよ。後で分かったんだけど、女帝ミスラが彼らからバー(魂)を抜きゾンビのような兵隊を造っていたんだ」

「あー、そうだな。俺は何故記憶の森を目指していたか話したいんだ。脱線するな」

カイゼルがトラゴスに言うと彼はしょんぼりした様子を見せ甲板から去って行った。