同年代のオトコたちはどうしているのだろう。もちろん皆が皆不倫遺伝子を持っていて同じように女性と仲良くなりたいと思っているわけではないだろうし、ざっくばらんにこの種の話が出来る人間が案外少ないことに気が付いたが、一人、商事会社に勤める昭夫がいる。

昭夫は秀司と同じ大学のスポーツサークルの後輩で、共に酒好き、遊び好きだったことから少し年齢差はあるものの気が合って長く付き合っている。

バブル期には給料やボーナスが上がったために小遣いも増え、仕事は楽しく、毎晩のように飲み歩いた。バブルが崩壊しても大手の銀行と総合商社なので、仕事はきつくなり交際費も絞られたもののプライベートに大きな影響は及ばなかった。

昭夫は勤務先の若い一般職の女性との不倫が妻にばれて、修羅場をくぐったことがある。女性が昭夫に夢中になり、妻と平等な立場になるには妊娠しなければ不公平だと言ってきたり、休日に昭夫の家を訪ねて妻に離婚を迫ったりしたらしい。

もともと昭夫夫妻の夫婦仲は円満とは言い難く、不倫とは関係無く昭夫から離婚を申し入れていたが妻が嫌がり、離婚調停に掛けられることになった。

だが成立せず、夫婦関係もサラリーマン生活も続いていたが、不倫相手の若い女性との関係はやがて冷めて、彼女は異動した後に結婚退職したと聞いている。結局双方の実家も兄弟も巻き込んで大騒ぎしたあげくに元の状態に戻っただけだった。

久しぶりに昭夫と会うことになった。昭夫は数年前に病気をして、しばらく御無沙汰だったのだ。

秀司より年齢が三つ若いのでまだ現役の商社マンとして活躍していたが、五十五歳でポストオフになってからは責任の軽さが思いのほか昭夫の心を解放したらしく、仕事に対しては別の角度からアプローチ出来るようになり、プライベートにも十分な時間を掛けられるようになって楽しんでいるらしい。