愛しき女性たちへ

オトコを楽しめるのはあと数年だろう。

愛人が欲しいとか恋愛をしたいなどと思っているわけではないが、まだ新たな女性と知り合って親しくなり、男の欲望を発散させる可能性にときめきたいのだ。かといって風俗店やキャバクラにいくほどガツガツする歳ではない。

あと数年、六十代のうちは好きな女性と、いや好きになりそうな女性と食事やお酒、おしゃべりを楽しみ、お互いの気持ちがあればその先も楽しむような素敵な時間を共有し、この先の少ない年数を過ごしたい。

情けないとは思うが、オトコの生のモチベーションはいくつになってもオンナということらしいのだ。だがこの歳で、付き合いに発展するような自然な出会いはもう望めないとわかっている。

仕事やセミナーなどで知り合った女性に積極的にアピールする若さや元気はもう無いし、良い感じの女性と知り合ったところで食事に誘ったりすればビックリされて引かれるだけだろう。

こんな年寄りが持つ、若い男には無い魅力とは何だろう。人生経験とか思慮深い判断とかの話ではない。もっと具体的で即効的な何か。

やはり金だろうと秀司は思う。もちろん余裕があるわけではないが、普通の若いサラリーマンよりは多少多めの金は使えるのが中高年だ。

銀座のクラブに勤める幸恵のことは好きだったし、幸恵と会ってクラブに同伴するというデートコースも、秀司の男としての承認欲求が満たされリフレッシュ出来る素敵な時間だったが、いかんせん金が掛かりすぎる。

幸恵と男女の関係になることは秀司の余裕資金では無理だろう。家の金を持ち出すことは絶対にしないと決めてもいる。