想定外の質問がされたら、アドリブで何とかなるだろうと思っていた。ほとんどの家庭は両親が付き添うが、我が家は父親だけだ。やはり、片親だけだと面接官に対する心証が良くないと思ったが、仕方ない。

私が中学受験に携わったことによって、父親であることの一つでも成し遂げられたと思っている。娘も頼ってくれているような感じがした。

日常生活の中で、娘と会話することはほとんどなかったが、勉強以外のことも会話するようになり、少しだけ仲良くなれた。

毎年、二月上旬に有名私立中学の合格発表のTV中継がある。今までは傍観者で、受験する家庭は大変だなどと他人事のように言っていたが、今は当事者だ。中学受験をいかに乗り切るか、受験の大変さを改めて知った。

中学受験が終わり、私は娘に母親ががんであることを伝えた。

「彩ちゃん、ママね、乳がんというがんの病気にかかっているんだよ。とても恐ろしい病気なんだよ。ママ一生懸命、病気と闘っているんだ。彩ちゃんもママのこと応援してあげて」

「三月になったら、病気の手術のため、しばらく入院することになるけど、我慢できるね」

小学六年生にもなれば、いつも寝たきりになっている姿を見ておかしいと思わないわけがない。娘は私たちから、母親ががんであることを教えられ、どう思ったのだろうか? ショックを受けているようには感じられなかった。