筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護

在宅介護は、絵に描いた餅でしょうか。

平成二十三年度は、在宅介護に力を入れ、医療費削減に力を入れたいという政府の方針が打ち出されました。しかし私の経験からすれば、こと重度障碍者であるALSの夫に関して言えば、明らかにこれは絵空事(えそらごと)であるということが言えます。

今、手元に『福山市内居宅サービス等提供事業者の指定状況』なるパンフレットがあります。ある日、在宅介護に入りましてから、夜仕事を終わってからの介護を担当してくれる娘夫婦が、急に遠方での仕事が入り、出かけなくてはならないことになりました。遠方なので宿泊となるので、わが家では夜ヘルパーさんの帰った後の介護が困ってしまいます。

そこでせめて四、五日夫を預かっていただける施設がないのか、慌てて調べました。その際使用したのが前述のパンフレットです。この表によって、今在宅介護をしているが、家族が急に出かけなくてはならなくなったので、臨時に二、三日間預かっていただける所があったらとパンフレットの片端から電話をかけてみました。

このパンフレットは福山市からの物であり、なるべく家から近いところから電話をかけていきました。しかし、悉く断られたのです。それがベッドに空きがないということであれば仕方がないのですが、人工呼吸器使用者は受け入れの対象外ということなのです。これが判り、怒りは愚か呆れてしまいました。

こうなると『居宅サービス等提供事業者』のするサービスとは、一体何なのかと疑問になります。この指定業者に電話をかけますとまず『ALS』と病名を言った段階で、けんもほろろに電話を切られてしまいます。

「自発呼吸はどのくらいあるのか」と聞かれるのはまだましな方で「人手不足でそういう重度は扱わない」という所。「ALSは面倒なので・・・」とはっきり断わる所もあり、だんだんこちらが虚しくなってきました。そのほか「うちでは痰の吸引はしません」「痰の吸引をしたり、重度な人はお預かりしません」と、当然と言わんばかりの口調が返ってきます。

また、これに『胃瘻』を造設しているとなれば、もっと断られる回数は高くなってきます。このサービス提供事業者は、いわゆる軽度の、元気の良い、手のかからないお年寄りしか預かってくれない所なのかと少し寂しくなりました。