結婚後三か月程度が過ぎ、妊娠が分かった。
「新しい家族が一人増えるね」と私は言った。
千恵は、
「絶対、女の子がいい」
「着飾って、可愛くする」
「小さいうちから、いろいろ習い事をさせるんだ」
と言って、楽しみにしていた。その反面、大病を患ったことで、
「子供を産むのが怖い」
「どうして?」
「結婚前に患った病気のせいで、胎児に異変があったら私のせいだから……」
「その時はその時で、どうすればいいか、考えればいいことじゃない。起きるかどうか分からないことを今から心配してもしようがないでしょう」
「名前は何にしようか、今から少しずつでも、考えておかないとね」
翌日、姓名判断の本を購入し、名前を考えることが楽しみの一つになった。
その数日後、流産した。気丈な千恵ではあったが、涙は隠せなかった。
「ごめんね、新しい家族できなくなっちゃった。ごめんなさい」
私は、気にしていなかった。千恵は、結婚する前、「私は、あまり子供は好きじゃないの」と言っていた。結婚し、妊娠すると考え方も変わるのかと思ったほどだ。