ある脳科学者によると、男性は女性に比べると快楽の刺激に中毒になりやすいらしい。高いお金を払うことが馬鹿馬鹿しいと感じつつ、美しい女性に認められ承認されること、高いお金を払える社会的地位があると認識されること。
つまり高級クラブではオトコとしての承認欲求が満たされて、テストステロンが分泌されモチベーションが上がるのだ。
プロの女性たちは主張せず反論せず、いつも男の意見に同意をする。なぜなら男は主張しない女を求めているからなのだ。自分だけがいつも尊敬され評価されたいのだ。
他者から評価されることが快楽として認識されるオトコの性質を上手く利用して商売をするという、クラブは一種の社会システムなのだろう。
銀座八丁目のソニー通りと並木通り、花椿通りに囲まれたビルの地下に、「おおたけ」という天ぷら屋がある。銀座には美味しい天ぷら屋が多くあるが、「おおたけ」は秀司が一番気に入っている店だ。
カウンターが八席程度、テーブル席が二つ、奇をてらわないオーソドックスなインテリアと清潔な白木のカウンターのこじんまりとした規模感もいい。秀司はいつもL字型カウンター席の右隅の二席を予約する。
大将が手際良く食材を扱う姿を見れるのも楽しいし、客席、オープンキッチン、厨房ともに白々しい蛍光色の灯りを一つも使っていないところも落ち着く理由かもしれない。
適度な距離感を保って接してくれる大将と賄いの女性は、こちらの要望を聞き入れつつ食べるスピードと時間を見計らってタイミング良く料理を出してくれる。
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次回更新は8月14日(水)、20時の予定です。