銀座や麻布、六本木の高級クラブでは月に五百万円くらい使う若い客が珍しくないという。

高級クラブのママやチーママの誕生日というと高価な反物やバーキンがプレゼントされるのは当たり前、その上で市販価格五十万円程度の一九七〇年代ドンペリP3、六十万円はする一九九〇年代のクリュッグ・クロ・ダンボネや二百万円を超えるロマネコンティなどが抜かれる。

店での値段は二、三倍はするのだろう。先日は幸恵が以前勤めていたクラブで、席に着いた女性七人全員にドンペリ・レゼルヴ・ドゥ・ラベイをプレゼントした客がいたそうだ。これらは特殊な例かもしれないが秀司とは住む世界が全く違う。

だが、そこまで金を使って何か良いことがあるのだろうか。

クラブの女性と知り合い、ちやほやされたところで、イイ女にモテモテの一流の男だという自己満足以外に特段得るものは無いように思える。

高級な料理屋での食事を促され、お店に同伴すると最低でも一晩十万円は掛かる。

かといって恋人同士のような付き合いや男女の関係に発展するのは、よほどいい地位にいて、かつ自由に交際費を使える身分か、あるいは中小企業でも何かのはずみで業績が好調な社長連中が、頻繁に通える場合だろう。

少なくとも秀司の場合はそのような発展は無かった。それが高級クラブの女性なのだ。頻繁に通って、多くの金を女性にも店にも落とせないとだめなのだ。

新宿や出張先の大阪でクラブやバーの女性と関係を持ったことはあったが、一流クラブではなくとも結果的に相当な出費となった記憶がある。大人の関係を望むならば、もっとリーズナブルで合理的な方法はいくらでもありそうなのだが。

まあそんなことを考えるくらいだから、銀座のクラブは秀司の遊び場ではないということなのだろう。