第3章 貧困に耐えた中学時
最後の通信票のエールを胸に
合格者名が校舎の壁に張り出されていました。
そこに自分の名前を確認しても、「嬉しい」とか「良かった」と言う思いは他人事のようで、ただただ「早く家に帰りたい」の一心で、人混みを離れました。
校庭に響く歓喜に沸く声を背中に聞きながら、一人校門を後にしたのです。この時程一人の寂しさが身に沁みた事はありませんでした。一人ぽっちの自分には無関係に思える歓声が、いつまでも耳の中に渦巻いていました。
帰り道、合格はしたものの、
「この私が、あの賑わいのある学校に馴染めるのだろうか」と、とても心配になりました。
家もこれからの事を考えると不安で一杯です。
早朝店の閉まっている人通りのない商店街を、足早に家に向かいました。いつも通っている大通りが、いつもとどこか違って私の足に馴染みません。
町中を通り抜けて家に続く坂道を、たった一人でトボトボと歩いて帰った思い出は、ずっと心の中に棲みついたままなのです。
田畑一面に、まだ肌寒い早春の朝もやが立ちこめていました。まわりの景色がぼんやり霞んで見え、一層不安が募ります。
私はふと、「そうだ! 早く帰ってご飯を炊かないと」気を取り直して走り出しました。