翌日、再々度梅図赤子の名を見た時、さすがに首をかしげた。いつもと同じ差出人、いつもと同じような箱が、こんなに送られてくるのはおかしい。もしかしてこれは、瞳子さんがぼくを呼び寄せるための手か?という気がしてきた。
金が掛かる通販ばかりやっているわけにもいかず、配達物を自分で自分に送っている、ぼくに会うために? そうであるなら、あんがいカワイイところのある女(ひと)だな、と思ってしまう。とはいえぼくは、無職暮らしの暇つぶしの相手にされているだけなのだろう。
ぼくの隣では、品川さんも荷物の積み込みをやっている。白い息を吐きながら、カートに山積みされた荷物を、白い軽ワンボックスの中に投げ付けていく。あれで中身は大丈夫か?とこっちが不安になってしまうくらい乱暴だ。品川さんとは酒屋の同業だし、他のバイトは主婦ばかりということで、作業中よく話しをする。
「品川さん、またですよ」
ぼくは例の荷物を見せ、彼に話し掛けた。ただの話題提供のつもりだった。
「ここんとこ毎日、オレここの家に荷物届けてんですよ。しかもいつも同じ差出人でさあ。よくそんなに送るものがありますよね?」
品川さんは、とんがったキツネ目でぼくが抱えている荷物を見た。思案しているげに下唇を突き出して。
「これ、あれじゃねーん」
彼はさも分かり切ったことであるかのように、意見を語る。
「同じもんをさあ、伝票はがしちゃあまた貼って、ぐるぐる回してるんじゃねーん。ほれ、ここなんか、伝票はがすの失敗した跡かもよ」
確かに、ダンボール箱の表面がはがれ、白っぽい地が見えている箇所がある。同じ箱を何度も使用するには、貼ってある伝票をそのつどはがす必要があり、何度もやっていれば、表面も傷んでくるだろう。
「やっぱり、そうか」
同じ推察を品川さんが述べたことで、ぼくは確信に近いものを得た。
「でも、どうしてそんなことしてんですかね?」
「爆弾だな、きっと」
「爆弾?」
「うん。ある一定の衝撃加えるとさ、爆発するようにできてんだよ、その箱。省吾ちゃんが生きて荷物を届けられるか、途中で車ごと吹っ飛ぶか、スリル楽しんでるね、そのおっかしな野郎。あ、梅図赤子か、じゃあイカレ女だ。省吾ちゃん、ふっ飛ばされないように気を付けなよ。おいおい、そう考えるとさ、このバイトも恐いよな? 配るもんこっちは選べないもんなァ」
【前回の記事を読む】風変りな彼女の部屋は予想に反して普通の生活空間であった。それは砂漠のような仕事場のオアシスのようだった…
【イチオシ記事】修学旅行の入浴は拷問…「男子の前で裸の方がまだマシ」
【注目記事】事故死なんかじゃない…姉の自殺を確信した「授業ノートの殴り書き」
7月22日 13:53