そんな鬼に対して子どもたちはもしかしたら「へーきみって力持ちなんだね」「なんだかなつかしい気持ちがするんだけど、この気持ちはなんだろう」と声をかけているのかもしれないのだ。
年長さんクラスの担任の先生からはこんな話を聞いた。クラスに帰って子どもたちは「あそんであげればよかったのに」「かわいそうだったね」と話をしていたそうだ。
それから、鬼の「おーい、こっちゃきてあそんでいけ!」ということばを繰り返して言って遊んでいたという。子どもたちは「いいよ、あそぼ!」と言ったのだろうか。島の人々と同じように、鬼のことばを聞かずに、目の前からいなくなることを望んだのだろうか。
鬼を怖いと言わない子どもたちのことばと「鬼を生きさせてやりたかった」という作者の気持ちは孤独とは別の感情でつながっているように思えた。
「ころころころ」
作:元永定正 出版社:福音館書店
初版年月日:1984年11月22日 対象年齢:読んであげるなら 2 歳から
「もけら もけら」
文:山下洋輔 絵:元永定正 構成:中辻悦子 出版社:福音館書店
初版年月日:1990年11月30日
対象年齢:読んであげるなら 2 歳から、自分で読むなら小学低学年から
この 2 冊は、読み手の「ことばであそぶ力」が問われるかもしれない。
『ころころころ』は、色々な色をした小さな玉たちが「ころころころ」転がっていく。かいだんみち、あかいみち、さかみち、などなど、小さな玉たちが「ころころころ」と転がっていく。
何種類もの「ころころころ」が登場する。子どもたちは、「けらけらけら」とよく笑う。
『もけら もけら』は「もけらもけら」だけでなく、「もけ」とか「もけけ」「しゃばだば」とか、色々なことばたちが登場する。「もけらもけら」するのは不思議な……何かだ。これはなんだろう。
文を書いたのはジャズピアニストの山下洋輔さんだ。リズムを感じさせることばばかりだ。
どんなふうに読むと楽しいのだろう。みんなと楽しみたいな。
でも、読み手があんまりふざけすぎると、きっと聞いている方にはことばの楽しさが伝わらないかもしれないなあ。
でも、やっぱり楽しくことばあそびしたい。ことばあそびの絵本は他にもたくさんある。子どもたちとたくさん楽しみたいな、と思う。
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