「暑い、暑い! 助けて!」と苦しむ妻の身体は、実はとても冷たく、本当に冷やしてよいのか、温めた方がよいのか理解できず悪戦苦闘。

30分おきに扇子であおぎ、脚の向きを変え、床ずれで痛痒い背中を隙間からさすった。その繰り返しで朝を迎えた。

今朝、看護師に聞くと、「手術後7日間は自身でも身体をコントロールできない。パニックに陥りやすいので、極力、暑いと言えば冷やす。寒いと言えば温める等、希望を叶えてあげてほしい」と助言を受けた。

朝6時、妻は疲労からまどろみ始めた。歩いて5分の院内売店に、妻の願いであるジュースを買いに行った(院内売店には衣料品は多いが願いの品はなかった)。

妻に自傷リスクがあることから、24時間介護の私にも外出禁止条件が付与されている。

10分程度ならと許しを得て久しぶりに外の空気を吸った。入院前には感じなかった朝の冷気を浴びて、季節はいつの間にか冬仕度に入っていることを感じた。

妻はおかゆしか食べられない。病院食のおかゆは、当人には飲み込めないと言う。引き続き持参したすり鉢で数分間すり続け、液状にしてから飲ませている。

変化があったことといえば、妻の1食がスプーン2口から4口になったこと。2口増えたことが嬉しくて嬉しくて。白湯の様なおかゆは命を繋ぐ栄養源だった。

「ジュースの味が分からない」という妻の言葉があったが、高熱のためだろうと受け流してしまった。味覚障害が発生していることまでは、この段階では気づかなかった。