筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護
見つかった『オアシス』
その事業所は、残念ながらこの福山市内ではありませんでした。お隣の市にあるというのです。そこからでも受け入れて扱ってくださるというのです。早速電話をしますと、その事業所は、一度本人の状態を見せてもらってから、返事をするということでした。
これを聞いた娘は、「あああ、また見に来て断られるんだね。また会ってみてダメだと言うのでしょ」といつものことなのであきらめることに慣れてしまい、さびしいことを言うのです。そして初めからあきらめてかかってしまっているのです。
「そのうちに本当に心からの医療者に出会うと思うよ。あきらめない、あきらめない」と一番あきらめている私が、ここは娘を慰めるしかありません。
日を置かずしてその事業所の方が、夫との面接にお見えになりました。施設長と主任のお二人で。二人とも看護師資格をお持ちとのことでした。
娘は施設長が俳優のジョン・トラヴォルタに似ているとしきりに言い、私たち家族はさっそくあだ名を『ジョン様』と呈上いたしました。
このジョン様事業所では、もう少し夫の一日の生活を知りたいということで、後日、日を改めて、じっくりと視察にお見えになることになりました。
二日置いて、主任が視察においでになりました。お弁当持ちで。療養室で熱心にメモを取り、ヘルパーや訪問看護師の行動の一挙手一投足を見逃すまいという表情で、熱心に観察されておられました。