そのうち、ファンクラブから会報が届くようになった。そこにコンサートのお知らせが掲載されていた。第一希望から第三希望まで申し込んでも、なかなか当たらないらしい。職場で友希恵さんに聞いてみることにした。

すると彼女が言うには、綿密な作戦を立てなくてはいけないというのだ。仲間同士で二枚、三枚、四枚と、申し込みの日程を組み、さらには東京だけでなく地方公演も希望すれば当たりやすいらしい。

「しずかさんも仲間に入りましょうよ」と言ってくれたので、作戦に参戦することにした。第一希望は一番当たりやすい札幌公演にするというので驚いた。当たったら北海道へ行くなんて夢みたい、とちょっとわくわくした。

昔丸の内のOLだったころ、しずかは旅行ばかりしていた。北海道には友人とスキーに何度も行ったし、家族で行ったこともあった。海外旅行にも毎年のように行っていた。だが、子どもたちが大きくなってからはまったく行かれなかった。

何しろ夫が忙しすぎて休みの日にわざわざ出かけるなんてありえない。しずかもパートをそんなに休めなかったし、娘は塾、息子はサッカーや水泳などで予定が合わないのだ。一人で旅行するなんて夢のまた夢なのであった。

もともとしずかが女子大を卒業してすぐに就職した旅行関係の会社は、バブル全盛期で派手な男性社員が多かった。