お金がないくせに夫婦ともに外面がいいので、そういうときにはよいものを持っていきたがる性分なのである。以後、しずかは自分の育ちの違いが現れないように極力気をつけている。
安い食材で美味しいものをさっと作るテクニックを少しずつ学習していった。
今度は少し遠出をしましょうよ、と約束をして、その日はお開きになった。集会所の使用料とドリンク代を頭割りしても数百円という値段で楽しめたのだった。
お金の使い方については遊びにいくときにも学習したことがある。
近所のママ友と子どもたちを連れてプールに出かけたことがあった。遊園地の中のプールは広くてたくさんのアトラクションもあるが、お金もかかる。しずかは覚悟して一万円札を財布に入れたが、足りないかなと不安になる。
しかし、同行したママ友はクーラーバッグ持参でお弁当やおやつも持ってきている。売店で買うとふつうより高いドリンクも持参した水筒で済ませる。
着替えるときは、コインロッカーも高いので、使わずに衣類はすべてバッグにいれてプールサイドへ持っていく。パラソルも浮き輪も借りたりはしない。入場券も新聞屋さんからもらった券だし、電車を使わず自転車で来たというし、何と彼女はその日お金を一円も使わなかった。
そこの遊園地はしずかも学生時代にも来たことがあったけれど、なんでも高くてお金がかかった覚えがあるので、こんな人もいるのかとすごくびっくりしたのだった。