二人は並んで歩いていたが、風の向きによって篠田さんの付けている香水の甘い香りが美代子の鼻先を通り抜けていった。
気づいた美代子が「いい香水の匂いですね。さわやかで秋の季節にピッタリですわ」
「昨年ヨーロッパ旅行に行った時、パリで買ったの。香りって、選ぶの難しいでしょう。だから店員さんが選んでくれた二、三点の中から選んだの」
「私は、この香りが、嫌味が無くて好きです」
「ありがとう。選んだのが正しかった証拠ね」
「旅行はよく行かれるのですか?」
「独り身になってから、気が向いた時に空の人になっているわ」
「一人旅行は気軽でいいですものね」
おしゃべりしている間に、いつの間にか駅に着いた。
「プラザ21のビルの中に最近オープンしたカフェがあるの。そのお店に入ってみましょうか?」と篠田さんがビルの二階に繋がるエスカレーターを指さした。
美代子が「私、このビル初めてです。いろんなお店が入っているのですね。やはりたまプラーザは開けていますね」と言いながら、周りを物珍しくキョロキョロしていた。
「ここなんです」とお店の前で立ち止まった。
「ポーズカフェ。面白い名前ですね!」
「フランス語で〝一休み〞というらしいですよ」