Chapter 01 キャリアを「天職」にする
~経験を重ねることが人生戦略の第一歩~
6 創造的なしごとから―人生の満足を得る
④弟子をとるときはまず人を見る。掃除をさせるとすぐにわかる。隅まできちっと掃除をやる人はまず伸びる。掃除で性格や品格がわかる。早くてもいい加減にササッとするのはダメだ。
しごとが上手な人は掃除も上手だ。しごとの手順がよくなって材料や道具も大事にする。こころがけがしごとに現れるのである。
⑤技術や、やり方は身体で覚える。今は、手間を省こう、省こうとするからおかしなことになっている。人や社会までおかしくなっている。掃除から始まって、しごとの積み重ねから立派な人格ができる。人からも信頼されるのである。
⑥生前、中村さんはお金について、こういっている。
「財は作りたい。ただお金を儲けたといっても、財をつくったとはいえない。財を作るということは、いい材木をたくさん買っていい建築を残すことである。いい建築を残すということは人を喜ばすことになる」
これが中村さんのいう財である。
中村さんは完成した建物にも不満が多かった。建築が始まって終わるまで、施主も中村さんも成長していくからだ。
柔らかい頭を持ち、常にいろいろなことを考え、亡くなるまで成長した人である。その考え方、知恵、やり方などは後継者である中村義明さんに継承されている。
孫にあたる公治さんも、国立大学で建築を勉強された後、一緒にしごとをされている。「一本立ちできるのは40歳以上でしょう」と義明さんがサラッといわれた。
ユニクロの柳井さんをはじめ、中村さんの建築された家に住んだ人はさらに立派になる人が多い。中村さんは施主の運命がどうなるかを常に心配されている。
人やものを生かす。限りなく顧客満足を求める。施主とのコミュニケーションを大切にする。現場の経験を生かす。柔らかい頭で常に自分の成長を図る。あらゆるしごと、いろいろな人の人生にあてはまることだ。
実は、1年間、京都の北、大徳寺の近く、中村さんの品質マネジメント(ISO900認証取得)のコンサルをさせて頂いた。貴重な経験、心から感謝している。