「ごめんなさい」
さしもの川島も謝った。
「私にじゃなくて恵理ちゃんに謝りなさい」
「小川さんごめんなさい」
とりあえず、この場面ではこうするしかないと思った川島だが心の底から謝ったのではない。親たちの話は理解できている。島の恥であることには間違いないと思っていた。
しかし、女子の中には児童会長の愛のように、お父さんは島の恥とはわかっているが、恵理への思いやりというしっかりした感情を持つ子もいた。男子はただ素直に自分の思いを言うが、成長の早い女子は人の心を気遣うことがちゃんとできるのだ。
学校では愛が生徒の暴走をその存在感の強さで押さえていたが、島民は、小川家の悪口をやめることはなかった。そのうち、小川夫妻の知らないところでどんどん非難は大きくなっていった。
もともと小川夫妻は二人とも人間関係を作るのが苦手だったが、他の島民は小川家を避けるようになった。祐一も智子も、そらぞらしい島民の態度が何故なのかはよくわかっていた。
泥酔した祐一の漂流海難事故がニュースになって以来、小川夫妻はこの孤島という閉ざされた小さな世界で孤立することになった。
ここは、一切を捨て、家族で新天地を見つけに広い広い本土に移住すればいいのだが、代々住み続けた沖ヶ島。祐一には、この島を離れるなんていう選択肢はなかった。