天津では朝からの打合せの為に坂道を上っていると縦一メートル、幅二メートルくらいの氷の塊に出くわすことが多々あった。
夜間に破裂した水道管より漏れ出した水でできた氷の塊だそうだ。歩道を塞ぎ、車道まで伸びていることもあり、それを、作業服を着た十人程の清掃員がシャベルの腹で叩いているのも毎朝の風物詩のようになっている。
同じような光景を丽萍(リーピン)と天津空港*の滑走路で見た。空港の滑走路上にできている水たまりのような氷の塊を皆で叩いて取り除いている。物珍しさに見ていたが、丽萍(リーピン)を始め周りの中国人は一瞥を与えることなく、まるで見えないもののようであった。
同様に会社内で毎朝、ゴミ箱のゴミを集めている清掃員に声をかける社員を見たことがなく、現地社員に「おはよう(早上好)と、挨拶くらいしたら」と言うと「彼らの仕事だから」と一蹴される。階級意識というか、仕事の担当区別というか、習慣の違いに驚くこともある。
北京から天津行きのバスではあまりの寒さに寝そうになると隣の中国人が小突いて起こしてくれた。このまま寝込んだら風邪をひくか足先が凍傷になる可能性があるそうで、彼は一睡もせず、天津まで起こし続けてくれた。
香港上海間の飛行機は地下鉄のように十分に一便程度の間隔で飛んでいる。上海での出発時刻は常に遅れていて、チェックインカウンターで「チケット通りの飛行機だと一時間遅れで三時間後に出発ですが、直ぐに乗りたいのなら、今から走ろう」と言われることがある。
その飛行機のボーディング時間は案内板では三十分以上前になっているので、半信半疑で、一緒に走る地上乗務員と保安検査場も入国審査、税関検査場もガンガン擦り抜けていく。
搭乗ゲート前でボーディングチケットを渡され、乗り込み着席させられる。預けた荷物が心配だが、心配している間に離陸(テイクオフ)となっている。落ち着かないまま、香港に到着し、問題なく入国できることに驚かされる。
*天津空港……天津浜海国際空港(天津市)
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