「新入生?」

「はい、そうです」

「どうぞ。大歓迎よ」

「よろしくお願いします」

「名前は?」

「坂元ゆきといいます。一年三組です」

「画材は用意してきた?」

「はい。スケッチブックと鉛筆を持ってきました。私はデッサンをしたいんです」「それじゃあ、今日から一緒に始めましょう」

先輩はそう言うと、各自、自己紹介を始めた。その日から私は、美術部の部員になった。

美術部の部活は、毎週月曜日と木曜日の週二回放課後に行われる。私は月曜日に入部したが、次の木曜日の部活の日になって、また一人新入生が入部してきた。

その新入生は自分を、「大内陽平です。一年八組です」と紹介した。

先輩は、私とその新入生に、「何と呼ばれているの」と聞いた。

それで私は、「いつも、子どもの時から、ゆきちゃんと呼ばれています」と答えた。

その新入生は、「陽平と名前で呼ばれています」と答えた。

先輩は、「では、部活でもゆきちゃんと陽平で呼ぶことにしましょう」と言った。

陽平も、中学から部活は、美術部に所属していて、水彩画を描いているとのことだった。

その後は、新入生の入部は誰もいなかった。それで一年生の部員は、私と陽平の二人だけとなった。