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箱が変わった。これまでの二日間は、通販の服でも入っているのか、A3サイズほどの平たいダンボール箱であったのに、今日はA4サイズほどとナリは小さくなったものの、代わりに二十センチほどの厚みとなっている。
送り主も通販会社ではなく、梅図赤子という女の人からだった。梅図赤子から轟若芽へ、やや変わった名前同士のやりとりである。
そのことは初め、ぼくにとってはどうでもいいことで、むしろ昨日の瞳子さんの言葉が真実であったこと、そしてなんて配達物の多い女なのかと呆れ気味になったことが感想の大半であり、そして今日もまたあの不思議なオアシスを訪問できることに、安心めいた喜びを覚えていた。
別に色っぽいことを期待しているつもりはない。
いや、配達人とお客という関係でなければ期待してしまうのかもしれないが、そういう厳然たる仕切りがあるため、かつてあのようなことがあったからといって、今のところぼくには彼女は顔見知りのお客さんというだけで、それ以上の関係を欲求する妄想力には欠けている。
オアシスでいい。配達という渇いた仕事の途中にあるオアシスで、潤いを補給できればそれでじゅうぶんなのだ。
ただ、そこでもっと潤いを補給したいという気分はある。それで今日は、瞳子さんへの宅配を最後にすることにした。
そうすると最も効率のよい配達ルートとはならないが、まだどっさり配達が残っているうちに瞳子さんのところへ行っても、気楽に会話することもできない。もうちょっとのんびりと、彼女と話してみたいと感じていた。
お昼近くになって瞳子さんのアパートを訪ねた時、
「今日はちょっと遅かったね。事故で死んじゃったかと思った」
などと縁起でもない言葉で出迎えられた。
わざと配達を最後に取っておいたというのは照れるから、今日の配達ルートの都合上最後になってしまったと言い繕う。
「そっか、今日はもう配達ないのか」
配達票にサインすると、瞳子さんは思案するようにぼくの顔を見つめた。
「じゃあ寄ってく?」
「え?」
「お茶くらいなら出すけど」
「いいよ、ここで」
「ここでは寒いわけよ、わたしが」
平然とした顔をしていたが、確かに家着のまま外の風に当たっていたら寒いだろう。
彼女の本日の出で立ちは、腿まで長さのあるベージュのセーターに、タイトな黒いパンツ。意味もなくあたりを見回し、無人の渡り廊下を確かめてから、
「じゃあ、ちょっと一杯だけ」
のこのこと瞳子さんのあとに付いて、ぼくは部屋に上がり込む。
ちょっとドキドキしたけれど、真昼間だから色っぽい展開など期待するわけもなく。
【前回の記事を読む】覗き込むような上目遣いでドアから顔を出し、「あら、いらっしゃい」と僕を迎え入れた