慰められるのを期待していた梨花はズバッと言われたのでポカンとして美桜の顔を見ていた。

「リカがお父さんの所に行きたいなら行けばいいよ。でもそれは今じゃないよ、たとえ行ったとしても報告する事なんてないし、どうせ今まで泣いてばかりいたんでしょ。そんなリカが行ってもお父さん少しも喜ばないと思うけど」

梨花がそれに頷くのを見て彼女は話を続けた。

「いい……これから何年もかけて楽しいことや幸せを感じることをたくさん経験して勉強もして好きな人と恋愛して、それをお父さんに話してあげたらきっと喜ぶんじゃないの」と言って梨花の顔を覗き込んだ美桜が微笑むと梨花の目からは涙が零れてきた。

「ありがとうミオ……そうだね、そうする」と言って涙声になり嗚咽(おえつ)を漏らした梨花が口を手で覆うと、「バカだな――リカはもう、泣くのは今日だけだよ。明日からは私と一緒に前を向くんだよ」と梨花の背中を美桜は優しく撫でた。

自分のオーラを全開にして美桜は母親でさえ直せない梨花の心の病を一瞬で解放し、彼女が抱えていた心の闇を明るく照らした。

失われていた梨花のオーラは美桜によって再び輝きを取り戻すことができた。

二人の顔には春の陽ざしが当たり、花の顔(かんばせ)の如く眩(まばゆ)いほどに光り輝いて見えた。

梨花にとり美桜は大切な※語らい人であり、美桜の言葉で※言祝(ことほ)ぎを受けた。

家に帰るとすぐに学校で美桜に会ったことを梨花は母親の梨枝に話した。

「同じクラスの結城美桜さんというすごく魅力的な子に会って心の整理がついたの。これからは前を向いて一緒に生きて行こうと言われて……」

「そう、それは良かったね。梨花の嬉しそうな顔を見たのは久しぶりだからお母さんもすごく嬉しいのよ。でもその結城美桜さんだけど、お母さんの高校の同級生で蓮見香桜(はすみかお)さんが結婚して結城さんになっていたから……もしかしたら彼女のお嬢さんじゃないかしら」


※ 語らい人とは相談相手で、言祝ぎとは言葉で祝福されること。

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