「昨日、渋谷の東急ハンズにいませんでした?」

わたしは更衣室のドアを開けるや、待ち構えていたように後輩のミナからそう尋ねられた。

「しかも金髪で。何かあったんですか?」 

どういうことだろう。ミナも第三のオンナを見たなんて。

「わたし、声かけたんですよ」

「それ、わたしじゃない」

当然のごとく、わたしは否定する。

「そう言うと思った」

奥から同期のエリが険しい顔で歩いてくる。

「一体どういうこと? わたしも声かけたんだけど。ちゃんと説明してよね、城戸さん」 

また呼び名が苗字に変わった。もはやそんなこと、どうでもいいが。

「わたしも見たのよ。昨日、南青山で」

エリが睨みつける。

「こっちも金髪。あれは絶対に城戸さんだった」

「千春じゃないの?」

とりあえず、そう問い返すしかない。

「じゃないって」

ミナとエリが、口を揃えたように言った。その続きをエリが話す。

「今さっき千春ちゃんに聞いた。自分じゃないですよ。まゆ実先輩です、って」

亜矢から聞いたときは「まゆ実先輩じゃないんですか?」と推測だったのが、断定に変わっている。

「本当に千春がそう言ったの?」

わたしは続けて聞いた。

「今どこにいるの? 千春は」

「千春ちゃんなら、先にコートにいきましたけど」 

ミナが答えると、わたしは更衣室を飛び出した。

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