第三のオンナ、
まゆ実
――三人めに会うと死ぬんです。
千春の言葉が脳裏をよぎるたびに、わたしは背筋に悪寒が走るのを感じた。掛布団を頭からかぶり、ベッドから起きることができないでいる。とうとう一睡もしなかった。
今は何時だろうか。時間の感覚がない。部屋の中は見えないが、布団越しに窓から朝陽が差し込んでいるのがなんとなくわかる。
昨夜、あの女が突如として現れるとは思ってもいなかった。
二階の自室で読書をしていたときのことだ。
コンッ、と窓ガラスに何かが当たった音がした。おそるおそるカーテンのすき間から目だけを覗かせると、自宅の前にマスク姿の金髪の女が微動だにせず立ち続け、射るような冷たい視線を向けていた。誰だかはっきりと認識できるようにと意識していたのだろう。
ベージュのスプリングコートを着ている彼女の顔は街灯に照らされていて、遠目でもツイン・ファクトリーに登録していた女の子だとすぐにわかった。
わたしと瓜二つだったのだ! 驚くと同時に恐怖に襲われた。なぜそこにいるの?
まずその疑問が浮かんだ。
次に情報収集しなきゃと思い、スマホからツイン・ファクトリーのサイトにアクセスした。金髪女のプロフィールを開く。登録名に【あかね】とあるだけで、その他の情報は皆無だった。
他のSNSも調べてみた。だが、あかね、という名前で検索すると無数の候補がヒットして、誰が誰だかさっぱりわからない。わたしは匙を投げた。
ちなみに、九十九はるかは登録抹消されていた。ツイン・ファクトリーとフェイスアルバム、この二つとも。亡くなったからもしれないが、それにしても削除されるのが早すぎると思った。
わたしは、あかねの顔写真を凝視した。
一体お前は何者なのだ。
まさに正体不明……。第三のオンナ。
そう呼ぶことにした。
「学校いかないのー?」
階下から母の声が聞こえた。高校からは放任教育の自己責任主義だったのに珍しく干渉してきた。なんの用事だろう。美魔女となった母がわたしに声をかけるのはきまって、男のことか、面倒な頼まれごとがあるときだ。
わたしはゆっくりと上半身を起こした。目覚まし時計は午前八時三十分。家を出て急いでも一限目の授業には間に合わない。今日は午後から大学にいこう。