次の日、致高様を迎えに行くと、至って普通におじさんが出て来た。どういうふうに説明したのか気になったが、ともかく、今日はゲームセンターにでも連れて行こうかなぁー、驚くよね、などと考えていると、急に呼ばれた。

「洋子、図書館なる物があるらしいな、案内してくれ」

出て来た致高様が唐突に言って来る。

「えぇ、図書館。どうしてですか?」

「昨夜、蔵人、いや今はタマと呼ばれているらしいな、それで色々教えられ聞いたのだが、長い年月の間に様々なことが起こり変わって行ったと、だから図書館というところに行けば、もっと詳しく知る事が出来るとタマが言っていたので連れて行って欲しいのだ」

折角、一緒に遊ぼうと思っていたのに、タマの奴、余計なことを教えるんだから。

「そーですかぁ、わかりました。じゃ、ちょっと大きな図書館に行きましょう。それで調べ物が終わったら、一緒に遊びに行きましょ」

「承知した」と笑顔の致嗣の顔で致高様(もう殿でいいかっ! 呼び方)は言われるのです。

図書館に向かう道すがら、行き交う車、様々な警告音に広告音声、横断歩道の音楽などなど、それにバスに乗るのに、声には出さないが驚いているようでした。

「洋子……今は馬には誰も乗らなくなったのか」と殿はいささか、動揺を隠しきれないようすで聞いてくる。

「そうですね、移動の手段としては使われなくなっています。でも一部のところでは乗られています」

そうこうしているうちに降りるバス停に着く。殿は見上げる程の図書館と、隣に立つ病院の建物に圧倒されているみたいだ。

「ふーむ、今の世はこれ程大きな城のような物を建てることが出来るのか!?」

「殿、あのね、あっこれからは殿と呼ばさせてもらいます。この建物よりもっと高くて大きな物が、名古屋駅前とか栄という所にはたくさんあります。今度一緒に行きましょう」

そう答えながら二人図書館に入っていくのです。