はじめに
これは私の94年にわたる半生記であり、常日頃考えてきた内容を纏めたものである。
過去の経過、思い出など、書き置いたものを集めた。思索という言葉で言うなら、小さい時から読んできた本、病臥していた10ヶ月の間に読んだ日本古典全集や漢籍などが、いつの間にか心に残っていたのであろう。
現役時代は集団を纏め、自分のことを考えることはなく、集団がトラブルなしに過ごせることのみが考慮する内容であった。最近になってやっと物事や言葉などを、時間をかけて思索するようになった。本書に載せたいくつかはそれを紹介したものである。
「壁」という言葉に興味を持ち、考察を重ね、振り返ると、私自身、多くの壁に囲まれ、それを突破した人生であった。壁という表現は物質としても、心の中のものとしても、取り上げることができる。また、人生の区切りでも、壁を意識することがある。これら、色々な状況、心の持ち方を探ってみたら思わぬ多方面にひろがることになった。
これらは、壁に関わる方が、もし、それに気づいていない場合には、気づくきっかけとなるかもしれない。気づいた時、それから発生する問題、対処などにも触れてみた。
当初は「壁」を一本の軸として纏める予定だったが、過去に書き置いた考察文、随想的な記録も含めた。「壁」と結びつくもの、結びつかないものも含まれている。長年利用した別荘は、普段の壁で取り囲まれた生活からの脱出で、壁に煩わされた日常をリフレッシュするのに役立った。山荘録は行くたびに書き残してきたものである。
結果として、日常の壁からの脱出であったことに気づいた。また、「94年の思索の旅」は本書の総括でもある。