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あの雨の日の自己紹介から三日後、私と誉さんは、陶芸教室「アトリエ」に来ていた。
今日は、陶芸教室の日ではないけれど、泉先生は、理由は聞かずに工房を貸してくれた。「『あわい』、ですね」と、一言だけ言い残して。
私は、誉さんにありのままの私を見てほしかったし、誉さんもそれを見たいと言ってくれた。二人で土練りをしていると、誉さんは軽々と粘土を練る私に、驚いていた。二人だけの時間が過ぎていく。秒針すら時を刻むことを忘れてしまえばいいのに──。
確かなものなど、一つもない。だけど、確かでなくてもいい。闇雲だっていい。手を伸ばす勇気さえあれば、その手を取ってくれる人がきっといる。私にとって、誉さんがそうであるように。
「ねえ、知ってる?」
公園のブランコ。コンビニで買ったレモネード二つ。外灯に照らされた影二つ。
「人間は、天の神様が土から創ったんだよ」
「それ、どこかで聞いたことがある。どんな話だったっけ?」
誉さんが、読み聞かせを楽しみにしている幼い子のように聞いてきた。私は、それを愛おしく思い、話し始めた。
『天の神様と土の神様』
昔、天の神様が下りてきて、近くにあった土で、いくつか人間の像を創った。天の神様は、「明日、この人間の像に命をふきこもう」と考えた。そして、天へ帰っていった。
しかし、明日になって命をふきこみに下りてきた天の神様は、驚いた。何と、土で創った人間の像が、すべて壊されていたのだ。
「いったい、誰がこんなことを。何てひどい奴だ」とお怒りになり、もう一度、いくつか土で人間の像を創った。そして、今度は天へ帰らずに、大きな木に登り、様子を見ることにした。
すると、地面が大きく揺れ、一人の神様が現れた。その神様は、目の前にある人間の像を見ると、次々に壊した。それを木の上から見ていた天の神様が下りてきて言った。