太平記たいへいき巻第かんだい三、巻第かんだい十六など)、増鏡ますかがみなど(赤坂あかさか千早ちはやたたかい、桜井さくらいわかれ、湊川みなとがわたたかい)

【19】「楠正成(くすのきまさしげ)」

鎌倉時代末期の頃のお話です。

楠正成は河内かわち(大阪府)の人です。

第九十六代後醍醐天皇(ごだいごてんのう)が北条氏を罪人として成敗しようとした倒幕計画が幕府側に漏れ、陛下は笠置(かさぎ)(京都府)に逃れることになります。

そして、陛下は正成を呼び出して、幕府を討つ計画を問います。正成は答えて言いました。

「天罰が加われば必ず幕府は倒れることになるでしょう。大きな事業を始める際の重要な点は、戦略や作戦が整っていることです。

もし、力だけで競い合えば、武蔵・相模(関東地域)の兵隊は天下で一番強靭な兵隊であると言えます。

戦略、作戦を立てて、これに立ち向えば敵を破ることも容易になるでしょう。しかし、戦いの勝ち負けは、はっきりと分かるものではありません。

たとえ、一度負けたからといって志を変えるべきではありません。臣下である私が倒れることがなければ、陛下の大御心(おおみこころ)を心配させることはありません」

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