迷いながら揺れ動く女のこころ
美月が美代子に向かって「テレビの宣伝で使用前、使用後の体を見せてるどこかのジムのコマーシャルを見ていて感じるんだけど、あれって本当にスリムになるんですかね?」
「私もよく分からないけど、パーソナルトレーナーが専属について、何か月間も食事療法を取り入れながらやるんじゃないの? ずんぐりむっくりの体が腰回りがくびれて、贅肉がどっかへ行ってしまったようね。そして顔の表情まで締まってくるのは不思議」
「美代子さんもそのように感じました?」
「マジックにかかったようだもんね。視聴者に訴える効果は抜群よ」
側でじっと聞いていた悠真が真面目な顔で「全てお金だよ」と吐き捨てるように言った。
「そうか、時間とお金をかければある程度は叶うのね」
美月は別世界のことのように思い半分諦めた表情を見せた。
「美月さん、美容の世界も同じよ。高価な化粧品を使えばある程度効果が現れるのと似てるわ。でも基本は土台よ。女性なんか顔の輪郭がそこそこであれば後は各パーツの問題で化粧方法が決め手になるのよ。美月さんは小顔だし肌もきれいだから、出るところに出れば見違えますよ」
「変化に挑戦しようかしら」とまんざらでもない素振りをして見せた。
「おいおい、僕が困るよ、放置されると野たれ死になってしまうよ」
「大丈夫ですよ。美月さんまで見放しませんから。付き添いの女性が美しいほど悠真さんも気分がいいでしょう。特に月に一度のリハビリなんか都心に出かけるんだから、他人の目にもたくさん触れるからね。美月さんだって奥さんに間違えられたっていいものね」
「私は奥さんの代わりは務まりませんよ」
「四十に目覚める、とか言ってね」