父の和夫さんは遅くなって帰ってきて、夕食を食べながら、

「良かったね。クロが元気に帰ってきて」

と母の春子さんと話しているのを聞きながら、一郎と純二は眠りにつきました。それからまた、毎日クロとの生活が続きました。時々クロが帰ってこない日もありましたが、

「そのうち帰ってくるよ」

とあまり気にならなくなっていました。

別れ

4月、5月、6月が過ぎて、7月になりました。これまで3か月余りの間、クロがいて活気のある生活が続いていました。7月の下旬には、小学校の夏休みが始まります。夏休みになると毎年、家族全員でおじいさんとおばあさんの待っている島根県の郷里に帰ることになっていました。

「今年は、家族が増えたからどうしましょうか?」

と母の春子さんが言いました。子どもたちは皆、

「カラスのクロも連れて行ってあげないと、クロが困るじゃないの。せっかく馴れてきたのに」

と口々に言いました。しかし、父の和夫さんは、

「連れて行きたい気持ちは分かるけどね。列車に乗って、何時間もかかるから、連れて行くのは無理だよ」

と言いました。

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