「七つまでは神のうち」という言葉があります。生まれてから七歳までは病で亡くなることが多かった時代に、預かっていたこどもを神さまにお返しするという意味で使われていた言葉です。言い換えれば、七歳までは神に近い存在なのかもしれません。
十歳ぐらいになると、ファンタジー(空想)の世界に浸るようになります。現実世界と異界を行ったり来たりしながら、世界にたった一人の自分を実感していくのです。行ったり来たりする方法は人それぞれですが、私も十歳頃に夢遊病(睡眠時遊行症)のような症状がありました。
本当に外を出歩いていたかどうかはわかりませんが、睡眠時に家の近くの坂道を歩いている感覚がありました。夢か現(うつつ)かわからない状態が続きましたが、発達とともに消失していきました。思い返すと、私もいろいろあったのだなあと感慨深くなります。
この十歳という前思春期の年齢について、山中康裕さんは『ハリーと千尋世代の子どもたち』(朝日出版社、2002)にて「人間が到達しうる哲学的、宗教的、実存的などという心の根源的世界の最高点に通底してしまう時期」だと言っています。
『千と千尋の神隠し』の主人公の千尋も十歳でしたし、児童文学で描かれる主人公も十歳前後のこどもであることが多かったりします。透徹したこどもの目から人生を見たらどのような世界に映るのかをファンタジーを通して描くことに意味があるのかもしれません。
でも、大人になったら、ファンタジーの世界に身を投じる余裕がないほど、現実の生活に振り回されている人が多いような気がします(私も含めて)。想像の翼を広げて空想することは実に楽しいことなのに。
「こんなふうに、あんなふうになれればいいなあ〜」と思いながら、人生を楽しんでいる大人って輝いて見えたりして。そんな大人が増えれば、こどもたちは「あんな大人になりたいな〜」とか「大人になることは楽しみだな〜」と思えるかもしれません。
だから、私はこれまでの生き方を少し見直して、〝夢見る空想ばあさん〞として、無邪気に人生を楽しみたいと思っている今日この頃です。