会社として初めて取り組む海外取引先とのデータ交換、海外ベンダーとのオフショア開発は、言葉の違いだけでなく、商習慣、契約形態、文章での仕様取り決め確認(中国語と日本語の取り違え、ニュアンスの違い)と、日本の取引先企業では考えられない問題が多発した。
その為、進捗とその確認・検証作業に、二月(ふたつき)に一回程度を予定していた訪中計画が実際には一週間おきとなり、日本側もそれに影響されて作業遅延を起こしていた。
オフショア開発で見込んでいた原価の圧縮により、仁は若干の経費の上澄みを利用して月曜日に渡海し、青島を経由し、土曜日に大連から帰国することを一週間おきに繰り返した。
帰国翌週は日本での業務調整を行うことを三月(みつき)程行っていた。予定していた天津、台北、香港、グアムの取引先とのデータ交換に関しては、二次開発へと後退を余儀なくされた。しかし、仕入金額の大半を占める上海、青島、大連の取引先とのデータ交換は計画通りの導入を会社から厳命されていた。
《小詩(シャオシ)、元気で過ごしていますか。あなたのことが心配です。昨日、仁と初デートをしました。彼は日本に家族があって、子供も二人いるそうです。写真を見ました。二人で大連観光して、中国の歴史を説明しましたが、私より彼の方が詳しくよく知っていました。
「大連」は日本語なんです。知っていましたか。大連は昔、ロシアに占領されていたそうです。その後、日本がロシアと戦争して、大連を手に入れたそうです。その時にロシア人が「ダイレン」と呼んでいたので、日本人が漢字にして「大連」にしたそうです。中国では教えてくれないけど、仁が説明してくれました。半信半疑です。でも、デートは本当に楽しかった。
百貨店で五百元(約8、000円)のコートを買って貰いました。他に冬用の手袋と靴も買ってくれました。姐姐 (ジィェジィェ)は楽しく生きていけそうです。私が幸せになる時は、小詩(シャオシ)も一緒だからね。