第二章 ピカデリーホテル

ガードマンは一人を残し二人で男を連れて部屋から出て行った。二人が賊を連れて出ると「怪我が無くて何よりでした!」と言いマネージャーは申し訳なさそうな顔をして、「警察への連絡は、寝ている方も大勢居るので出来れば明日呼ぶ事にしたいのですが宜しいですか?」と尋ねて来たので、翔は「勿論です!」と返事をするとマネージャーは「この部屋はもう使えませんので他の部屋へお移り願えますか? 少し狭いですが丁度隣の部屋が空いていますので宜しいでしょうか?」と聞いてきた。

翔が頷くと「お荷物をスタッフに運ばせますので隣へお移り下さい」と言って、翔を隣の部屋へ連れて行きながら「何時もヘッドギアを付けて寝るのですか?」と聞いてきたので翔はニヤリと笑った。

マスターカードで開けてライトを点けたマネージャーは不思議そうな顔をして翔に「こっそり二人が入って来たとおっしゃってましたね!」と確認し、カードキーも無いのにどうして……と思いながら、残ったガードマンへ直ぐ「清掃員控室を見てこい!」と指示し、ガードマンは走って向かった。

マネージャーは翔に「後でカードキーをお持ちします」と言いながら、「多分清掃員控室からキーを取ったのでしょう」と呟いた。マネージャーが部屋の電話でフロントに指示しているとガードマンが戻ってきて、清掃員控室で二人の清掃員が倒れていたと伝えに来た。

翔は椅子に座って、そのやり取りを聞きながらあの二人は無言だったが何処かで見た気がするのだが……と思い出していた。が、襲われる理由は全く無いので分からなかったし、見当も付かなかった。

マネージャーも事務室へ戻り、新しい部屋に翔の荷物が直ぐ届いた。二人に襲われた時はチリチリした感覚が身を包み緊張したが、今は何の変わった感覚も無くホッとしていた。

汗で汚れたシャツを慎重に脱ぎ、新しいシャツとトランクスを持ってシャワー室に入るとバスタブの中で寛ぎ、耳と左肩に注意しながら右側に熱いシャワーをゆっくり掛けホッとした気分に浸っていた時、突然下の方で大きい音と何か壊れた音がしたように思えた、が、シャワーの音に阻まれ殆ど気にする事無くシャワーを終え身体を拭き、バスガウンを着てベッドに横になるとそのまま寝てしまった。

ジェッダは、エレヴェーターの方へ走りながらこっちを見ているダンと一緒に非常口を走り出て飛ぶように一階へ下りた。暗い中をホテルの角まで行き、大きなゴミ箱の陰に隠れてダンに失敗した事を伝えイマルが捕まったと話し、直ぐ車をこの角まで持って来るように指示した。