少しの間待って、服を整えガードマン控室の方へ向かった。ドアは開いていて、ガードマン三人の前にイマルが床で潰れて転がっているのが見えた。ジェッダは直ぐに音響手榴弾を取り出し、開いた部屋の中へ放り投げて耳を思い切り塞ぎ、廊下を向いた。と同時に手榴弾が爆発し、中を覗くと三人のガードマンが倒れていた。

ジェッダは直ぐにイマルを肩に担ぎ搬入出入口へ向かった。ジェッダが近づいて来たのを見たダンがドアを開けると、イマルを中へ放り投げながらジェッタは車中へ倒れ込み、車は直ぐ走り出した。

ジェッタは、走る車の中で二人重なって乗り込んで下になっているイマルを少しずらし、手を縛っていたベルトの戒めを解くと顔を覗き込んだ。イマルは目を瞑って静かに息をしていた。目の前にはえぐれて凹んだこめかみが見え少し腫れているように見えた。

車がキングスクロスのアジトに着くと又イマルを肩に担いで降り、「車を駐車場に戻して来い!」とダンに言って、地下に降りるドアのカギを開け下へ降りていった。アジトに戻っていたサリムは階段の音を聞いて、「ジェッダが帰って来た!」と言って部屋のドアを開けた。

ジェッダが入って来て、担いでいたイマルを傍の長椅子へ寝かした。あっけにとられて其れを見ていたファイサルは大声で「どうした! あのやつじゃないじゃないか! あいつを始末したのか?」と続けて声を張り上げた。

ジェッダは「失敗した!!」とうな垂れて応えた。ファイサルは「失敗!」と言いながら寝ていた簡易ベッドから起き上がろうとしたが、目の痛みがぶり返し横になった。暫くしてゆっくりと起き上がり足を下ろして、ベッドに座った。

イマルの方を向いて顎で示し「どうした!」と聞いた。その時ドアが開いてダンがゆっくりと入って来た。一瞬皆がダンの方を向いたが直ぐジェッダの返事を待った。

ジェッタは手短にホテルでの出来事をしゃべり、最後にガードマン詰め所に手榴弾を投げて、捕まっていたイマルを担いで逃げたと語った。

ファイサルは聞いていたが、ホテルで手榴弾を!と聞くと目を広げ、「警察が大騒ぎしているな!」と呟き、ダンに直ぐ「車のナンバープレートを替えろ!」と指示した。ダンは直ぐ奥へ行ってナンバープレートを持つと急いで出て行った。

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