逆に重複立候補しないという潔さと正々堂々としたスタンスが日本民主保守党の小選挙区から立候補する候補者に有利に働いていった。

武藤は報道の状況や、これまで有権者心理として八〇%以下の惜敗率でも復活当選を果たす重複立候補に不満を感じていた、その不満を武藤が、姑息で卑怯と断言してくれた事により、幾分かその溜飲を下げる事ができた気がしていた。

そして、政党支持率が野党第一党を上回る高支持率を得た事で、小選挙区に立候補する公認候補者全員の当選を確信し、比例区で八三議席以上を取れれば一〇〇人以上を要して野党第一党に躍り出られると確信していた。

問題は比例区で何人当選させる事ができるか?に掛かっていた。

当選者枠の一番大きい二八人の近畿ブロック、次に大きい南関東ブロックの二二人の定員、二一名が定員の東海ブロック、二〇名が定員の九州ブロック、一九名の北関東ブロック、一七名が定員の東京比例区ここでどれだけの当選者を出せるかがカギとなった。

武藤は連日側近達と選挙で勝利する為の戦略を練る中で有権者の期待を集める戦略を次第に確信していった。小選挙区では有権者に重複立候補という保険の様な立候補はしないと宣言して、「よくぞ言った!」と喝采を浴びた。

そこで武藤が考え付いた比例区で大勝する為の戦略は、人事構想を先に提示して選挙に臨むという戦略である。

たとえば拉致担当大臣に拉致被害者を救出する友の会会長の楯岡剛を、その副大臣には不審失踪者問題研究所所長の村地冬彦を当て、国土交通省副大臣(海上保安庁担当)として尖閣諸島問題に詳しい海洋研究のスペシャリト、海洋大学教授の佐山明彦を当て、外務大臣に外務副大臣を二回経験している外務省出身のあの静岡選出の議員を当てる等の人事構想を選挙の前に公表する事で、国民有権者の期待を集めようという武藤らしい戦略であった。

小選挙区と比例区併せて一〇〇議席以上を占め連立政権を組む事となったなら、条件はこの人事構想を受け入れることであるとマスコミに大々的に発表したのである。

今回も反響が大きく武藤の立ち上げた新党に国民の期待が集まっているのは誰の目から見ても明らかであった。

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