死んでしまった男に、聞くこともできないからわからないが……。実際警察では、着々と捜査が行われていて、目星はつけていたらしい。
私が警察に捕まった2日後、私の彼氏の遺体が、私の家の近くの川から見つかった……と聞かされた。彼氏の顔が浮かび泣き崩れた。彼氏の死因について警察に話を聞いた。
司法解剖の結果、彼は首を刺されたことによる失血死だった。玄関の外に血が残っていたことから、別れた直後に玄関の前で首を刺されて殺されたのではないかと、警察は推測している。
首の後ろの包丁の傷と、男が持っていた包丁の刺し傷が一致。その包丁から、男、私、彼氏の3人の血液の反応が出たという。留置所の中で私は、膝を抱えて震えながらうずくまっていた。あのニュースを見なければ、こんなことにはならなかったのに、とひとり泣き叫んだ。
「彼氏を返してー! 何故……何故。私はここにいるの。子供達のところに返してー、何故私が裁かれるの!」
と、大きな声で何回も叫んだ。
私は、取り調べで無実を訴えかけた。
「証拠の携帯を見てください。私は子供を守るためにしたのです。……あの男が、殺そうとしてきました。だから……」
すると、
「それが証拠ですよ。あなたは、罪を償いなさい」
と、刑事が言う。
私が、何を言っても信じてくれない。何故……何故なの。毎日泣き叫んだ。
そして裁判の日が決まった。何故? 私が裁かれるのか……。子供たちよ。ママのしたことはあなたたちにとってよかったんだよね?
「神様、お守りください。お願いです。子供たちの所へ帰してください」
そうして訪れた裁判の日。
裁判で流れた、証拠映像。それは左腕を刺されて、携帯を落とした場面からの映像だけだった。そこに映っていたのは、倒れた男の上に馬乗りになり、包丁を振り上げている私だった。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と男が謝っている。男は急に大きい声で、
「早く、早く、家から逃げて!」
と、子供たちに聞こえるように叫んだ。娘の部屋から子供たちが出てきた。
そして、男は私にしか聞こえない声で何かを話している。映像からは分からない。