私は尋ねた。

「私、結婚することに決めたの」

「決心がついたのね」

「ええ、そうよ。正樹さんのようにステキな人とは、もう巡り会えるとは思えないし。それにニューヨークでの生活にも夢と希望を持っているの。私、子どもの頃から海外生活に憧れがあったでしょ? 英語も使ってみたいし。彼は、もう既にニューヨークへ転居したんだけれどね、私も高校の卒業式を終えたら、彼のところへ行くことにしたの」

「二人とも新しい人生が始まるんだね」

「ええ、私、今、とても晴れ晴れとした気分よ」ユミは言った。

「私も、正樹さんとのニューヨーク生活に期待で胸をふくらませている」

「そうか、二人とも卒業後の道が決まったのか。あとは私だけね」

「そうよ。受験勉強、頑張ってね」

「ええ。頑張るわ。二人の進路が決まって、私も勇気がもらえる」

私たちは明るい表情で喜び合った。

そして二月になり東京栄養大学の受験の日になった。私は大学のキャンパスへと向かった。私の高校からも数名が受験することになっている。私は過去問題集を何回も繰り返し解いたので、その大学の入試問題には慣れている感覚があった。英単語もイディオムも、単語帳、まる一冊暗記した。

私は、どうしても、この大学に入学したい。そして、管理栄養士の資格を取って、将来は、ジョイフルクッキング教室で料理の先生になりたい。私は、料理が好きなのだ。

自分の好きなことをしながら、生計を立てられるくらい幸せなことは、ないはずだ。私は、精神的に、経済的に自立した大人の女性になりたい。

私は、自分で自分のことを、芯のある人間だと思っている。他人に左右されない、自分の考えをしっかり持った人間だと思っている。それに、自分は明るくて積極的で、どんな困難も乗り越えていくだけの精神力を持った人間だとも思っている。

だから、あとは、自分の好きな料理の道で、生計を立てられるようにすればいいだけの話だ。この大学に入学することは、その第一歩となるはずだ。

【前回の記事を読む】ニューヨークに転勤する彼氏にプロポーズされたと悩む友人…。