ここでお断りしておきます。山門をくぐる時は黙礼するし、仏像を前にもちろん手を合わせますが、私は仏教信者ではありません。したがって、仏像は古い歴史が刻まれた美術品として鑑賞しています。
しかし、それが今でも多くの人の信仰の対象であることを決して忘れてはいません。また、たびたびの戦火や自然災害、明治初期の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)の嵐から護(まも)り伝えてきた人々がいます。今はその人々に敬意を表す意味でも仏像に向かって合掌するようになりました。
この本を出版するに当たり、関連する寺社に写真掲載の許可をお願いしました。寺社によって対応はさまざまでしたが、ほとんどの寺社が快諾してくれました。
掲載料は自費出版を配慮して免除してくださったり、少額にしていただきました。中には原稿に朱を入れ、資料を提供してくれたところもあります。お忙しい中、対応してくださった寺社の方々に、ここで改めて感謝の意を表します。
〈お便り拝見いたしました。返事が遅くなり申し訳ございません。仏さまを参拝巡りされることが大変好きなことがよくわかります。仏さまを描くことは難しいんでしょうね。長い間の思いを、ゆっくりと実現させて下さい。お元気で〉
奈良の円成寺(えんじょうじ)からこんな温かいお便りをいただきました。有り難いことです。感謝いたします。
ご存じの通り、ほとんどの仏像は写真撮影禁止です。カラーページの絵は私が描きました。仏像の絵はその品格を損わないように描いたつもりです。多くは筆ペンでの描線に顔彩で彩色しました。色はあくまでも私のイメージです。
最後になりますが、この本はガイドブックを意図してはいません。したがって、拝観料は記載していません。交通機関は当時のもので再調査はしておりません。特にバス路線については新型コロナの影響で廃止になったり、便数が極端に減っていることもあるようです。
また、飲食店に関しても料金は当時のもので、店舗によっては現在営業していなかったり、新型コロナのため閉店に追い込まれたところもあります。この本を参考にして計画を立てる際には、事前に最新の情報を確認してください。
なお、拙著『続続 丹沢 山紀行』(白山書房,2023年)に、かつての山伏を偲(しの)ばせる「八菅神社例大祭」や「日向薬師例大祭」の見聞記、また、「高尾山修行体験記」や「高尾山八十八大師巡拝記」を収録しています。こちらも読んでいただければ有り難いです。
2023年初夏 菅原 信夫