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皇帝へ一時の別れを告げ、地上への帰還をアタワルパに命じる。

死んだ者もいたが総勢48人は1人ずつ不思議な虹の球に囲まれ地上に移動しているのだろう。

確かに研究だったため複数の大型ボートであったが大人数が現れボートに残っていた乗組員は驚いた。

「あんた達誰や?」

「地底都市の研究隊だよ」ゼイルもおじいちゃんだ。

時間を聞く。

「さっき行ったばかりではないか!」という船長。

耳が遠くなったワルテルがもう一度聞く。

船長「出発して0.1秒もたってないよ」

「地上はそれだけしか時間がたっていないのか? ……たった、0.1秒の歴史の変化のために地下であれほど時を過ごしたのか……」

ワルテルは泣き出した。

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どこかの政権が退陣に追い込まれ、世界は地球温暖化対策に協力して植林や難民支援に取り組むことになった。

ワルテルは政府高官に地底都市フンハウとの交流と冷たい太陽の崩壊の対策のため共同で対処することを提案した。

精霊を見せるとどんな人も納得せざるを得なかった。

課題のためにビラコチャは新しい精霊の生産研究を重ね地球から技術調査員がフンハウに行くことになった。

 

研究が認められワルテルは満足してメキシコで死んだ。

メスティーソとはアメリカ原住民と白人の混血を意味する。

いわばワルテルはメスティーソなのだ。

インカを征服した白人は現地民を対等に扱ってはこなかった。

混血でもそれは変わらない。

南米考古学でも優遇されやすい人種はいる。

インカ原住民より自分優先したい考古学者はこれまでも何人も見てきた。

それ故、今まで人生として認められる機会は少なかったため研究として功績を残せたのはなによりうれしかったのだ。

インディオが世界に認められた1人になったのだ。

【前回の記事を読む】【SF小説】戦争に勝った住民たちがその土地を追い出された訳とは……