トーランスからロスの中心部までは、フリーウェイを使うと三~四十分くらいです。

これまでの比較的ローカルな地域から一転して大都会に入り、運転は多少緊張しましたが、意外とすぐに慣れるものです。

チャイニーズシアター近くまで行った時に、見慣れない信号が出てきて一瞬戸惑いましたが、こちらのドライバーは日本のようにすぐにクラクションを鳴らすのではなく、運転に不慣れな人にも比較的寛容で、しょっちゅう出会う意外な運転にも慣れっこのようです。

何せパトカーがウィンカーも出さずに平気で右折や左折をすることが多いお国柄ですから。

アメリカと日本の信号の大きな違いは、右側通行と左側通行の違いは勿論のこと、赤でも右折ができる場合がほとんどということです。

赤は止まれという認識が染み込んでいる日本人にとって、赤なのに右折するという行為が最初はものすごく抵抗がありました。

でもそれも三日もすれば不思議と慣れてくるものです。

駐車場に入るために信号待ちをしていた時のことです。大分運転に慣れて余裕が出てきたせいか、助手席に座っている陽介を見て、ふと呟きが口をついて出てきました。

「陽介君が生まれてきてくれなかったら、こうやってロスで車の運転をすることもなかっただろうなぁ」と。

男同士の親子というのは、自分と父親がそうであったように、照れくささからあまり感傷的な会話はしないものですが、この時の陽介も、フロントガラスの向こうに広がる都会の喧騒を、じっと見つめながら無言でいたのがとても印象的でした。

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