俳句・短歌 俳句 コンテスト大賞作品 2023.12.05 句集『バーの二階で』より三句 バーの二階で 【第3回】 田中 龍太 幻冬舎グループ主催 『短歌・俳句コンテスト』大賞受賞作品 日本の四季を彩った、“今”を表現する一冊 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 コロナ禍以降、読書を楽しむ機会が増えた人も多いのではないでしょうか? 本書は、その間に編まれた句集です。※本記事は、田中龍太氏の書籍『バーの二階で』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。 春の景 傍らに 菜の花の ありひとりきり カイロスに 後ろ髪無し 春の海 気休めの アロマオイルに 山笑ふ 【前回の記事を読む】句集『バーの二階で』より三句
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『因果』 【第3回】 愉怪屋 編 真っ赤に染まった部屋にある震える女性の姿。「嘘を吐いたら切ります」夫人がうめいた瞬間、舌を捉えていた鋏がショキと小気味よい音を立て― 「では……教授は」「途中で暴発したのね。銃も壊れてる。これは事故です」それなら願いは成就したはず。だが靄は晴れない。目印に引き寄せられ、どんどん濃く深くなっていく。「これで供物は二つ。お母さまも放っておけば死ぬけれど」ゆらりと顔を上げて、今度はロッキングチェアで震える夫人を見やった。弥子の視線に、震えがだんだん大きく激しくなっていく。「ねえお母さま、ひとつ私の質問に答えて」弥子がテーブルの上から…