俳句・短歌 俳句 コンテスト大賞作品 2023.12.05 句集『バーの二階で』より三句 バーの二階で 【第3回】 田中 龍太 幻冬舎グループ主催 『短歌・俳句コンテスト』大賞受賞作品 日本の四季を彩った、“今”を表現する一冊 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 コロナ禍以降、読書を楽しむ機会が増えた人も多いのではないでしょうか? 本書は、その間に編まれた句集です。※本記事は、田中龍太氏の書籍『バーの二階で』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。 春の景 傍らに 菜の花の ありひとりきり カイロスに 後ろ髪無し 春の海 気休めの アロマオイルに 山笑ふ 【前回の記事を読む】句集『バーの二階で』より三句
小説 『お嬢様の崩壊』 【新連載】 いけだ えいこ 銀行員の夫は給料五十万円のうち生活費を八万円しか渡してくれずついに… しずかは、自分がお嬢様だと思ったことはなかった。でも、最近になってやっぱり自分は周りと少し違うのかもしれないと感じていた。子どものころ住んでいた都内の家には部屋が十四ぐらいあったし、門から玄関までのスロープには車が三台くらい停まっていて、玄関ホールには大きな銅像が立っていた。習っていたピアノは日比谷でクリニックを開業している祖父の書斎に置いてあり、そこには仏像が立っていて、ピアノの練習をするとき…
小説 『天命愛憐』 【第11回】 せと つづみ わたしはほんとうに思いやりのある人がどういうものか、知っている。虐げられて苦しんでる女の気持ちが彼女にわかるのだろうか。 わたしは軽くおじぎをし、お盆を抱えて部屋を出ようとした。すると梁葦さんは、「ちょっと待って。わたし、今日はあなたにも会うためにきたの」と言ったので、わたしは身構えた。「城屋の工場のことは、いま大きな問題になっているの。元女工たちも声を上げて、闘おうとしているのよ。あなたも、このまま泣き寝入りしてはいけないわ。あなただけじゃなくて、他のたくさんの、搾取されて苦しんでいる労働者のためでもあるのよ」梁…