「お待ちしてました。大人輝男さんですね。どうぞ、こちらへお入りください。今日も暑いですね~~」

「そうじゃのう。じゃが、我輩はタフなのじゃ。何のこれしき」

そこで、「今日はお一人ですか」などと、にやつきながら言うものじゃから、「面接じゃから、一人で十分ではござらぬか」と返した。

すると、あっ、そうですね、などと言う。多少いい加減じゃな、と思ったのじゃった。あとで思えば、少々、舐められてたかの。まぁよい。何事もストレスにとることなく、前進前進。強行突破じゃ。

「それでは、こちらのソファーで面接を始めさせていただきましょうかね」

「少し待っていただけないかの。酷暑のなかチャリンコキコキコしてきて、喉が渇いておってな、お冷か烏龍茶か、なければビールでももらえないかの」

「失礼しました。冷えた青汁でもお出しします。少々、お待ちを」

恐らくは本日の面接の担当者なのじゃろうが、優雅にスキップしながら、部屋の隅にある冷蔵庫から冷えた青汁を出して手に持ち、寄ってきて、ぽんっと、テーブルの上に置いたのじゃ。

あまりよい気持ちはせんかったのじゃが、乾燥した喉を潤そうかと、一気に飲み干したのじゃ。厚意に甘えたくない我輩じゃが、一杯では事足りず、「まずい、もう一杯!」とおねだりしてしまったのじゃ。

その担当者は苦笑してから迷惑そうな表情に変わり、立つと、再び冷蔵庫に向かった。開けてお次は、何と何と、缶の甘酒を握っておるのじゃ。我輩の目の前にあるテーブルに置くと、甘さひかえめですよ、などとのたまう。我輩も変わった者じゃが、この担当者も、なかなか偏屈じゃの。我輩といい勝負じゃ。

これは確かに甘さひかえめじゃな、などと言いながら、また、一気飲みしたのじゃ。すると、「お味はいかがですか」などとほざく。我輩は気分が悪くなった。じゃが、人を恨むことなどせんのじゃ。世界は一つ、みんな仲間じゃ。

担当者らしき男は、ソファーに座り、我輩と対峙したのだが、いきなりことが始まる。「履歴書をお願いできますか」と言う。我輩は手に持っていた一張羅の黒いバッグから、くしゃくしゃになった履歴書を取り出すと、担当者に渡したのじゃ。

担当者は、両目を真ん中に寄せながら、紙面をあちこち辿る。我輩は緊張で、冷房が満遍なく効いていても、汗が止まることなく衣類に染み込んでいくのを実感したのじゃ。

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