みんなが居る前でーー! 慌てる私、すぐに立ち上がると、致嗣の横を通り過ぎざま、

「みんなの居ないところに行こう」と小声で言うとズンズン先に歩いて行き、体育館の裏まで行くと、振り向きざま叱ってやる。

「話って何、どうせタマ絡みの事だと思うけど、帰ってから電話くれればいいでしょ、番号教えたんだから」

「俺もそうは思っていたんだが、なんせ部活で疲れた上に、父さんと調べ物したりすると寝てしまうんだ。だから冴えている朝、学校で話そうかなと思ったんだ」

「ああーそうですか。それで何、タマがどうかしたのよね、このところ全然八幡社でも見かけないし、そっちに泊まっているんでしょ」

お守り猫なのに、そんなんでいいのか、罰が当たるぞ。本当に! そんな事を思っている私に致嗣は説明し出すのです。

「蔵人は凄いぞ。古墳時代のことまで知っているんだぞ。卑弥呼の墓は今一般に箸墓(はしはか)古墳と呼ばれているところだとさ、それからもともと卑弥呼が飼っていた猫だって知っていたか。倭の五王の時代に古墳が多く作られ、中でも雄略(ゆうりゃく)天皇が強権だったとか、継体(けいたい)天皇が地方の王と称されていた者たちを支配する国家体制を作られたとか、徐福に付いて畿内から色々巡りこの地に辿り着いたとか……洋子も聞いているのか?」

致嗣は興奮気味に話してくる。

「あんたねぇー、もうちょっと慣れたけど、呼び捨てなんですけど」私は強く指摘してやる。

「おぉー、悪い悪い。真さんと釣りに行くと、よくお前の話が出るんだ。それで聞いているうちに、いつの間にか俺の中では洋子と、呼び捨てになっていたんだ」

「ふぅーん、そういうことか。お兄ちゃんが私の話、出し過ぎって言うことね。……話戻すけど、タマからはザッとは聞いているけど、私に話し掛けてくるのは、近々の事柄だけでいいんじゃない、それより試合まだなの? 終わったら休み前でもあれ、やろうよ」

「試合はもうすぐだが、終わってから引き継ぎもあるから、やっぱり休みになってからにしてほしい」と致嗣。

「ふーん、わかった。それから私、歴史には興味無いから、学校で話し掛けないで。どうぞ一人で興奮しててください」

「酷い言い方だな。八幡社に呼ぶ時は歴史を調べているって言ってたから、きっと興味あるだろうと確かめただけだよ……じゃ、引き継ぎ終わったら電話するわ」

私が歴史には興味が無いと言いきった事に少し落胆したような致嗣は先に帰って行くのですが、彼の背に校舎裏にある大きな木々の影がうら寂しく差していた。

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