「二人とも、私たちの輪の中に入って楽しんでいますよ」

と話すと、先生は

「そっか、そっか……」

と安心したような笑顔を浮かべていましたが……。男女が話しているだけで噂になる時代だから、生徒が集まるみかどのことで、他の先生方から苦言があったのかもしれないと思うと、小嶋先生に申し訳なくて今頃になって心が痛みます。

母は子どもの話を真剣に聞き、冗談で応戦したりして、友だちのように接してくれました。ときには夕食の準備を忘れるほど熱心に向き合う母ですが、父も同様に、男子生徒と冗談を言い合っておりました。

騒いだりすることはないのですが、近所の人たちは生徒の数の多さにビックリしていたようです。そのうち、店の前を通るおばさんの中でよくない噂をする人も現れました。

「みかどは不良のたまり場だから、怖いわよね」とか……。

そのおばさんがあちこちで言うので、母の耳にも入ってしまいました。

「いい子たちばかりなのに不良って言われるのは心外だわ……」

噂の出所であるおばさんに文句を言うわけにもいかず、母は苦慮していました。母は私たちのことも気にしていましたが、

「悪いことしていないもん、全然気にしてないよ」

と妹の久美子も私もあっけらかんとしていました。そんな噂に負けず、母はみかどに来る生徒たちを快く受け入れていました。

【前回の記事を読む】こんな些細なことで心底喜んでくれるなんて!絶対に不良になるはずがないと確信した瞬間