第五章 野の小道

野の小道

ふるさとのこの道 懐かしい道

野の小道 この道

今朝は誰か通りましたか?

いえいえ 誰も通りませんでした

私たちが草の実をついばんでいただけです

チュンチュ チュンチュと雀が言いました

野の小道 この道

昼は誰か通りましたか?

いやいや誰も通ってなんかいないさ俺様が水たまりで水浴びしただけさ

どうだいこの黒々とした羽は烏が自慢そうに言いました

野の小道 この道

夕方は誰か通りましたか

いいえー 一日中誰も通りませんでした

静かだから早々と仲間を集めて夜通し演奏会を開きましたよ

コオロギが羽を小刻みに震わせて言いました

野の小道 この道 ひそやかになった道

誰が思いだそう

子どもたちの野いちご摘みの声も

つくしんぼうを探す声も

あの愛らしいざわめきは すっかり

遠くの雲に吸い込まれてしまい

足跡も足音も消えてしまった野の小道

明日は私が通りましょう

子どもになって

石蹴りしながら通ってみましょう