朝4時、アラーム音で目が覚める。寒くて布団から出たくない。今日は風が強いのか、窓のきしむ音。
ガタガタガタ
ガタガタガタ
「よし、起きよ!」
天気が悪いのかなーと思いながらカーテンを開けると、知らない男が鍵を、何かの工具で開けようとしていた。目が合った瞬間。グーで窓を殴ってきた。
その男はメガネをかけていて、髪は耳下くらいの長さで、ぼさぼさのおかっぱ。チェックのシャツを着ている。表情は、とても怒り狂っているように見えた。窓には防犯用のテープを貼っていたので、グーで殴り続ける手は血だらけで、窓ガラスにも血が飛び散っている。
「開けろーこの野郎ー!」と叫ぶ。
その男は殴るのをやめると、リュックから包丁を出してきた。棒立ちで男を見ていた私は、とっさに子供たちのことを思い出した。他の部屋から侵入されないように、男から目を離さないようにした。自分の部屋の扉を開けて、子供たちに聞こえるように大きい声で、
「起きてーあーちゃん、起きてお兄ちゃん!」
と、繰り返し叫ぶ。壁を殴ったり蹴ったりして、他の部屋に伝わるように何回も叩いた。子供を助けるのに私は必死だった。壁を殴る私の手も血だらけに……。
「ママー、どうしたの?」
と娘が近づいてくる。
部屋に入ると男に娘の顔を見られてしまう。部屋に入ろうとした娘に、
「きたら駄目! こっちに来ないで聞いて! 殺される。あとお兄ちゃんを起こして、急いでどこかに隠れて、外には絶対出ないで!」
と大きい声で叫んだ。
「わかった」
と、娘の声が聞こえた。
自分のスマホを片手に持ち、何かあったときのために、ビデオモードにした。男は怒り狂い、子供たちの存在がわかると隣の部屋の方へ行った。
隣の部屋は、リビング。急いで私も隣の部屋へ行く。
子供たちは、どこかに隠れたようだ。この部屋は部分的にしか防犯用テープを貼っておらず、男はテープの貼ってなかった窓ガラスを割って入ってきてしまった。私は台所から慌てて包丁を手に持ち男に向ける。男が家の中に侵入してきた。
「警察に連絡して、すぐ! 早く早く」
と、どっかに隠れている子供たちに聞こえるように大きい声で叫んだ。食卓テーブルをはさんでお互いの様子を見ながら、娘の部屋を守る私。
男が投げつけてきた包丁が左腕に刺さり、スマホを落としてしまった。でも子供たちを守るのに必死で、痛みなんてない。食卓テーブルの椅子を男にぶん投げて、男が倒れたところに私は飛びかかった。
そこからの記憶がない。