自分がこんなところで再びこの映画を観ていると知ったら、友達は軽蔑するだろうか。ありもしない可能性が頭をよぎり、腹の底がどろりと濁る。内容が頭に入らなくなり、喉がやけに乾きだした。
「うん、酒は毎日飲むよ。大体ビール」
「でも、きつくならないですか?」
うまく酔えればいいが、ひどい時は少しもよくなれない。過去の失敗から、まだ起こっていない問題まで、ネガティブなことが次々頭に浮かぶ。
「そういう時はもっと飲む。気持ちよくなるまで飲めばいいじゃん」
うしろからゆるりと手が伸びてきて、身体を抱きよせる。唇はぬるく濡れており、苦い麦の味がした。ベッドはなく、床に敷いたマットレスに押し倒される。酔った頭は考えることをやめていった。
窓が開いていることも、映画がクライマックスだということも、相手がシャワーを浴びていないということも、どうでもよくなっていく。現実が現実ではなくなっていき、人のにおいと、言葉の色彩だけがリアルだった。
樹の幹のような身体にのしかかられて、呼吸が乱れる。セイヤさんは鼻先から汗を滴らせて、息を止めて動き続けていた。
主体となる男性は苦しい時間のほうが長いはずだ。それでも行為をやめようとしない彼は若かった。山頂めがけて急斜面を駆け登るように、よそ見もなければ遊びもない。求めるのはゴールだけだ。
そのひたすらな動きが新鮮で眩しく、目を閉じてもなお、真夏の森に足を踏み入れたように万緑の光を感じた。
先端が奥深くをかすめて声を上げた。汗が顔に散る。いつの間にかマットレスの端に移動していた私の肩を掴むと、逃げるなよと言って一層激しく責め立てた。
そんなつもりはなかった。ただ、こんなに正面を切って求められたことがなかったので身体が自然とそう動いていた。私も苦しいばかりなのに、少しでも長くこの時間を感じていたいと思っている。いつしか彼と一緒になって頂上を目指していた。喘いで息を乱し、身体を震わせ、絶頂した。
終えたあと、セイヤさんはベンチプレスを百二十キロ上げたという話と、先日行った風俗店の話をした。
「みんなピンサロって呼ぶ店よ。出てきた姉ちゃん、全部でかくてさ。多分体重三ケタいってただろうな。俺でも持ち上げれんて。でも、それが凄腕で、座った瞬間もうおしまい。抜かれた」
プロの技を見たねえと、彼は歴史の証人のような顔をした。
「またリピートするかもなあ」
店で働く女性にも、通う男性にもスペシャリストはいるのだろう。